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愚王と魔法使い (仮) 5
魔法使いは、ただ生活していた。
毎日、飽きることもなく。

「愚王を捜してるんじゃないの?」

クラヴィスは何回か訊いてみた。
自分がここに来た理由を、忘れそうになるからだ。
しかし、魔法使いはいつもうまくはぐらかしてしまうのだ。

「魔法使い。僕は、神さまに会いたい」
少し肌寒いある日、クラヴィスはそうきりだした。
もうここにきて何日が経っただろう。
その間に、魔法使いと多くのことを一緒にした。

「魔法でぱぱっと、会いに行くか?」
魔法使いは意外なことを言った。
けれど。
「ううん。僕は僕の足で会いに行く。
どこに行けば会えるの?」

軒下に洗濯物を干しながら
魔法使いはその手を止めた。

「お城にいるよ」
それはごく、当然のように。

「お城って、どこ?」
「決められた道の先にある」
クラヴィスには、それがどこなのかわからない。
ふざけているのだろうか、と少し思った。

「この家の後ろにある道を、まっすぐ人の言うとおりに歩いて行く。
なにがあっても、自分の思うとおりにしてはならない。
人の言うとおりに、進むんだ。そうすれば、お城にたどり着く」

魔法使いは空になった洗濯籠を壁に立てかけて
お茶の時間だと、家の中にクラヴィスを呼んだ。

いつものように温かいお茶を淹れてくれる。
それは赤かったり、黄色だったり、いろとりどりのお茶。


今日は机の上に、いつもとは違うものが置いてあった。
古びた布製の鞄。
床には穴を閉じたぼろぼろの靴。
見慣れたものの中に
服だけは、何枚か質素な新しいものが用意されていた。

「神さまに会いに行くんだろう?」
その声が地面に落ちる。
クラヴィスの気持ちと一緒に。

その日は、とても豪華な夕食だった。
たくさんの野菜、魚、そして乾燥肉を煮込んだスープ。
その日は、とても静かな夜だった。
草の中で降りそそぐような星を見た。
月光が闇にまぎれてしまう魔法使いを映しだす。

クラヴィスは
深く息を吐いてから、もう一度吸い直し、
ゆっくりと魔法使いに言った。


「魔法使い。僕、神さまに会いに行くよ」


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アメブロ初出。October 10, 2014
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