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愚王と魔法使い (仮) 1
この世を全て支配する。
それだけが、望み。

「では、その望みを叶えて差し上げましょう」
魔法使いはそう言った。

「いや、ちょっと待ってくれ」
歯止めをかける。
「魔法使いよ、それではまるで私が君に支配されたようではないか」


しゃり、と林檎を齧る音が爽やかに駆ける。
多くの衛兵たちが固唾をのんで見守る中、魔法使いは林檎を片手に近づいた。

窓の外には高く太陽。
天蓋に描かれた肖像は、どうしようもない構造。
武器を手に、魔法使い以外は動かなかった。


「ならば、愚王よ。私はここに跪こう。
あなたはこの林檎をどうぞ受け取るがよろしい」
そうして魔法使いはより低く、頭を垂れた。
その手で齧りかけの林檎を差し出したまま。


愚王は立ち上がり、左手を伸ばした。
その果実に触れるために。
その頭を踏みつけるために。

「いや、ちょっと待ってくれ?
それではやはり君の言葉に従ったようではないか」

かすかな舌打ちが誰に聞こえただろうか。
そして魔法使いは立ち上がり愚王の顔面に林檎を叩きつけた。

「いーから受け取れバカ女」
「ふっざけるなこのくそったれやろう」
顔に当たるすんでのところ、小刀で刺された果実は床に転がった。

この世を全て支配する。
それだけが、望み。

愚王が。
魔法使いが。
幼いころから互いを支配する日を夢見て十数年。
その決着は未だつかず、悪態をつく平和な日々。


「おや、ならばこれはわたくしがいただきましょう」
たなびく髪は白い絹糸のよう。
かがめば腰にさらりと流れてするりと戻る。

「「あ。」」


愚王と魔法使いの目の前で、
その実を女が齧る。


その日、
世界はごく一部を除きその女のものになったのだと、
今では誰もが知っている。

その女を誰もがこう呼ぶ。
神さま、と。


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アメブロ初出。October 06, 2014
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